田舎の農家の納屋の二階に階段を作って欲しいという依頼。
農家の納屋の二階って、大抵ハシゴで登るようになってる。 うちの実家もそう。 昔は納屋の一階部分ではカマスを織ったり、ムシロを編んだり、豆の選別という作業のための場所。 二階は物置きだけど、階段まではないのが普通。 でも、物置なんだから両手に何かを持って登れた方がいい。
早速、丁度よさそうな廃材をみつくろう。
廃材でも電気カンナを一発当てると、新品同様に蘇る。
パイプハイスの中に設置する納屋の二階の高さを再現してみてシュミレーションする。 角度を測って階段の角度を計算するよりも、実際の高さにした所へ材木を当てて合わせる方が素人には確実。
これで水平機を当てて、段の所へ印をつけるだけ、 普通の階段の一段の段差は20㎝前後。 19㎝だと楽だし、23㎝になると大きい。 でも、今回のような納屋の階段の場合、場所の都合でそんなに緩い傾斜にできない。 傾斜がきついのに、一段の段差が少なすぎても降りる時に降りづらい。
今回は22㎝にした。 大工さんなら、斜めの材にルーターでスリットを入れてそこへ段の材を差し込む所。 そんなの大変なので、胴縁を斜めにカットして丁度段を受けるような部品を作る。 その部品をビス留めした所へ、段の材を置いて留める。 こういう細かい仕事に役立つのは木工ボンド。 大工さんも使うけど、木工ボンドを差してビス留めすると強烈な強度を得られる。
現場へ運んで設置。 シュミレーション通り、完璧に収まった。 おばちゃんの要望でつけた手すりも使い勝手がいいみたい。
階段って、自分の所で初めて作る時には段差も傾斜もどのぐらいにすればいいのが全く分からない。 さあ作ろうという段階になって、初めて実際の階段を測りに行ったり、大工さんに聞いたりして、どのぐらいが使いやすいのかを研究する事で見えてくる。 ベテランの大工さんや建築士なら階段だけでも、かなりの経験を踏まえての蓄積があるに違いない。
今回のも実際に使ってみると、中々よかった。 最近では僕も随分と慣れて、余裕でこういう仕事をこなせるようになってきた。 それでも、どの材料でどういう風に加工して、、、と考えながらのぶっつけ本番には変わりない。 マニュアルも決まりもないだけに、そのプロセスが楽しい。
大勢でワーッと片付ける作業も楽しいけど、こういう一人でコツコツやる作業がやっぱり僕には向いていると実感する。
一人の作業中の時間が一番好きだ。
何を使い、どこをどうデザインし、具体的にどう加工するか? 要望に叶う条件を満たしながら、自分の自由な仕事ができるから。
ここは手順を省くとか、ここは丁寧に仕上げようとか、自分が納得する仕事をして、施主に、「これはバッチリやわ!」と気にいってもらえると尚最高。 これは自分の家を建てるという目的で始めた廃材建築から、ヨソから頼まれるようになった事での新たな発見。
まあ、大抵のプロの職人からすれば、「何を今さら。」と怒られるに決まってるけど、僕の中では新鮮。 今までは要望に応えかねるようなケースもあっただけに、スキルが増す事は実に楽しい。
とはいえ、仕事にのめり込まずに、「日常の生活が一番大事!」という原点は揺るぎない所ではあるけど。
Comments